紙のチョウに命を吹き込まれ、舞い戯れる。あるいは、コヨリで親指を堅く結びあわされた両手の間を真剣の刃が通る、そして舞い散る紙吹雪・・・。
ふだんの寄席では、タキシード姿で西洋マジックを、さらっと演じることが多い。「落語と落語の間だから、あんまり派手にやっても、ね」。その一方で、大切にしてきた和の芸がある。日本の伝統手品「和妻」だ。
かみしもを着け、はかま姿で演じる和妻は江戸時代以来の伝統芸。大道芸としての歴史はさらに古い。トリックの原理そのものは、和も様も「基本的には同じ」という。違うのは見せ方。「和の魅力は所作。私はそう思います」。手の動き、体の運び、その美しさや華麗さ、間の静寂。そこが「西洋マジックより奥が深い。だから難しい」。
デビューして45年。出発は西洋マジックだが数年たつうち「まねではいつまでも2番手、3番手。人がやっていないことを」と、日本手品に取り組み始めた。古くさいと見なされ、やり手はほとんどいなくなっていた芸。資料に当たり、研究家に相談し、大阪の伝承者のもとへと通った。所作の美しさを表すため、踊りの振り付けも身に付けた。
「古い形をそのまま受け継ぐつもりはなかった。自分なりに、現代的にアレンジしたいと思ったんです」。もったいぶった口上を省くなど要素を除き、西洋マジックを和に移すことも試み、新しい舞台構成を編み出す。「工夫が積み重なってこそ、伝統でしょう」。だから今も工夫が続く。
ただ、せっかくの和妻も披露できる場所はあまり多くない。以前は料亭のお座敷もあり「中曽根さん(元総理)の前でやったこともありました」。今はディナーショーやイベントなどで月に2回程度という。7月3日には古里の胆振管内豊浦町でショーがあるが、これも洋の予定。洋の方が見た目が派手で、喜ばれるそうだ。それでも「国立演芸場(東京)に出るときは、和をやることが多い」そうなので折があればぜひそちらで。
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